やり過ぎない介護でも生活不活発病は予防可能

体の機能が低下した高齢者にとって、日常生活を普通に送るのは大変なことです。しかし大変だからといって動かなければ、心身の機能がさらに低下し、本当に動けなくなってしまいます。こうした生活不活発病を予防することも、介護職にとって重要な仕事です。

介護職は、食事や排泄、入浴など、高齢者が身の回りのことをする能力をなるべく維持できるようにしてあげなければなりません。そのためには、高齢者ができることを介護職が取りあげないようにすることが大切です。例えば食事の場面で、高齢者が時間をかければ自分で食べられるのにもかかわらず、口元にスプーンを持っていき介助をしてしまうなどの行為は、高齢者の生活意欲を奪ってしまうことに繋がりかねません。

高齢者の生活不活発病を防ぐためには、必要な介護と不必要な介護をいかに見分けるかが大事なポイントとなります。高齢者一人ひとりの能力を引き出しつつ、自分でできることを増やしていけるのが理想的な介護だとするなら、「待つ」のが最善の方法でしょう。

介護職が声を掛けてから、数秒後に動き出すのが高齢者のパターンです。その時間を待てずに介助をしていたら、高齢者は意欲を持てなくなりどんどん弱ってしまいます。高齢者が自分自身でできる生活行為は意外に多いものです。高齢者が動き出すのを待ってから支える介助法なら、介護職にとっても効率が良く、高齢者本人も納得しやすいでしょう。質の高いケア、ひいては生活不活発病を防ぐケアは、介護職が高齢者を待てるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。